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 7月20日、注目の第27回参議院選挙が行われ、予想通り与党の過半数割れとなった。自民党39議席・公明党8議席と合計47議席となり、過半数の50議席に届かなかった。これからの国会運営を考えると前途多難で、石破首相の手腕が問われることになる。今回の選挙結果を見ると、世の中の風を捕らえた国民民主党と参政党が大躍進、与党との明暗が別れた。それにしても、国民民主党の「手取りを増やす」、参政党の「日本人ファースト」のキャチコピーは、印象的な宣伝文句で現役世代に見事に刺さった。


 特に、「日本人ファースト」を掲げた参政党の大躍進は、トランプ大統領の「アメリカンファースト」と重なり、国の分裂を助長させるのではないかと、心配になる。しかし、これだけ得票数を獲得したということは、それだけ与党に対して不満が強いことを、示している。それが如実に表れたのが、クルド人問題で揺れている埼玉県川口市の参政党の得票数である。川口市では、自・公候補を抑えて、トップの得票数を獲得している。クルド人を含め、火葬厳禁のイスラム教徒が増加する昨今、これから大きな争点になるのは、土葬問題になるだろう。


 前回の2022年参議院選挙は、7月8日に安倍元首相が銃撃で倒れた2日後の7月10日が投票日で、弔い合戦ということもあり、与党は76議席の歴史的大勝であった。今回の結果を見れば、2028年の参議院選挙は、大幅に議席を減らすことは目に見えている。惨敗した自民党内から下野すべきという意見が出ているが、3年後を見据えているのかも知れない。2028年の夏は、自民党にとって正念場になるだろう。


 3度目の政権交代が起きれば、余計な心配をしなければならない。それは、政権交代時になぜか大震災に襲われている事である。1995年の阪神大震災は社会党の村山首相、2011年の東日本大震災は民主党の菅首相と、不思議なことに政権交代時に起きている。「二度あることは三度度ある」の諺があるが、「三度目の正直」の大震災が起きないことを願っている。

 6月25日、イスラエルとイランとの12日間戦争の停戦が成立した。イスラエルにとって、イランは不俱戴天の敵であり、国の存亡をかけた戦いであった。しかし、今回の戦争は両国が勝利宣言するという、奇妙なものであった。これを演出した、アメリカのトランプ大統領の役者ぶりは異色で、自らも勝利宣言し3か国敗者なき戦争で、一様丸く収まった前代未聞の珍事となった。トランプ大統領は、千両役者なのか大根役者なのかよくわからないが、破天荒な大統領であることは確かである。


 今回の戦争の結末を見て、落語の「三方一両損」(対立する双方を丸く収める状況を表す)を思い出した。名奉行と言われた大岡越前守が、一両を出して双方を納得させ丸く収めた話である。トランプ大統領は、イランの核施設を爆撃することによって、イスラエル・イラン双方に停戦を認めさせた。その方法は、最強の爆弾バンカーバスターを使うことによって、大岡越前守の一両と同じ効果をもたらし、「三方一両損」の状況を作り出した。今回の停戦は、「落語的停戦」と呼ぶことができる。 


 イスラエルは、人口一千万面積は日本の四国ほどの大きさで、人口九千万面積80倍の大きさのイランを翻弄する、中東一の軍事大国である。一般的に考えればありえないが、バックにアメリカが付いているからこそ出来る芸当である。アメリカには、世界最大700万のユダヤ人コミュニティがあり、政治・経済・メディアに大きな影響力を持ち、トランプ大統領も無視できない存在である。それが、アメリカにイラン核施設攻撃を踏み切らせた一因なのだろう。イスラエルは、アメリカにとって頭痛の種であるが、見捨てることのできない国なのである。


 日本は、アメリカと安全保障条約を結んでいるが、アメリカ国内の日系人の影響力は期待できないので、「いざ鎌倉」の時、本当に守ってもらえるのか疑問である。戦後80年、日本もそろそろ平和ボケから目を覚まし、自律する事を真剣に考えなければならない。

 5月26日、小泉新農林水産大臣は今後放出する備蓄米を店頭で、5キロ2千円(消費税抜)で販売すると発表した。今回は、令和3年・令和4年の備蓄米30万トンで、直接大手小売業者と随意契約を始めると、同時に発表した。この1年で米価は2倍となり、国民からの批判を受け、前例のない新方式での放出となった。前回までは、競争入札で行ってきたが、米の価格は上がる一方で、石破首相に対する風当たりは強まるばかりであった。江藤前大臣の失言によって、新大臣となった小泉氏の手腕が問われることになる。


 今回の令和の米騒動は、前回の冷害によって米不足になった平成の米騒動(1993年)とは違い、米価格の高騰が原因である。平成の米騒動では、外米が多く出回り、私自身も初めてタイ米を食する機会を得た。長粒種のタイ米は、パサパサしてカレーライスやチャーハンに向いているが、お茶碗で食べる米ではなかった。改めて、日本米の美味しさを再認識させる出来事であった。今回の米騒動は、これまで聖域と言われてきた米政策の一大転機をもたらすのか、自民党と農協にとって正念場である。


 一様、今回の価格高騰は米不足によると言われるが、なぜこれほど高騰したのか原因がはっきりしない。一つ気になるのは、インバウンドの影響である。昨年令和6年の訪日外国人数は3687万人、消費額は8.1兆円と共に過去最高を記録した。この8.1兆円の中には、食事の費用も入っている。日本食ブームもあり、お米を食べる外国人は多い。これだけの人数であれば、米の消費量もかなり多いはずであるが、新聞やテレビで報じられることはない。農林水産省は、日本人だけでなく訪日外国人ががどれだけ米を食べたのか、試算してもらいたいものである。


 古来より、米は日本人にとって政治・経済・文化に影響を与える特別な存在であり、宗教行事には欠かせないお供え物である。これからも適正な価格で食べられる、主食であり続けてもらいたいものである。

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