2月8日、第51回衆議院選挙が行われ、衆議院定数の4分の3を占める巨大与党が誕生した。しかし、最大野党の新党中道改革連合は、目論見が外れ歴史的大敗を喫した。中道改革連合は、立憲民主党と公明党が急遽選挙目当てに作った選挙互助会で、公明党が標榜する仏教用語「中道」を冠する党名である。中道とは、お釈迦様が悟りを求め修行する中で、苦行主義と快楽主義の両極端を否定する仏教思想である。この党名は、極端な右翼と左翼を排する、穏健な改革政党の意味合いを込めて命名したのだろう。 今回、自民党が単独で衆議院定数の3分の2を超える316議席を獲得できた要因は、「高市人気」に負うところが大きかった。それともう一つの要因は、高市首相の「台湾有事は日本の有事」の国会答弁を撤回しない事に対する、中国の過激で執拗な日本批判に有権者が反発したことも大きかった。中国は、日本社会を分断させ自民党の惨敗を狙ったのだろうが、結果的には逆効果であった。なぜ、これ程までに中国が反発するのか、日本人には不可解だが、中国のお家事情が影響しているのかも知れない。 2010年、日本の巡視船に中国漁船が故意に衝突させた時、その船長を当時の民主党政権は中国の圧力に屈し、あっさり釈放した。その経験から、中国は圧力をかけ脅せばすぐに撤回すると考えたのだろう。今回の選挙で落選した旧民主党の大物議員が当事者であったのは、何とも皮肉な巡り合わせである。この選挙結果は、日本人の意趣返しだったとも言える。まさか、これ程自民党が圧勝するとは、中国もさぞ驚いたことだろう。高市首相には効果がないことを、そして旧民主政権との違いを見せた選挙であった。 607年、遣隋使小野妹子に聖徳太子が持たせた国書の一文、「日出処の天子書日没する処の天子に致す」が有名である。これを読んだ皇帝煬帝は、激怒し次から無視しろと言ったと伝えられている。聖徳太子が、隋に対等な立場で国書を送った史実は、今日の日中関係にも脈々と息ずいている。日本は歴史的に中国の朝貢国であった事はなく、これからもない事を選挙結果で示した。この結果を受け、これから中国がどのように出てくるのか、注目である。

1月21日、奈良地裁で開かれた安倍元首相の銃撃事件の裁判で、山上哲也被告に検察側の求刑通り、無期懲役の判決が言い渡された。弁護側の「宗教が関わった虐待の被害者であるという視点が不可欠だ」という主張は退けられ、検察側の「幼少期に不遇だったことは認めるが、犯行とは無関係」という主張が通り、検察側の全面勝利となった。裁判長は、安倍氏については「落ち度は何ら見渡らない」と総括し、山上被告の都合を優先した銃撃には「大きな飛躍がある」と指摘した。 この裁判は、山上被告の安倍元首相の銃撃殺害だけに焦点を当て、その動機やそこに至る悲惨な生い立ちを顧みることはなかった。ようするに、結果だけを評価し原因を考慮しない、それが「大きな飛躍がある」の言葉に繋がったのだろう。しかし、原因のない結果だけというのは、仏教の「因果論」で言えばあり得ない、結果には必ず原因がある。今回の無期懲役の量刑は、結果だけを見て原因を見ない、判決だったといえるだろう。 無期懲役とは、刑期の定めがなく、受刑者が死亡するまで刑が執行される懲役刑で、死刑に次ぐ刑罰で、仮釈放されることはほぼない。それに対し有期刑は、基本的には「20年」であるが、複数の罰がある場合には「30年」が上限で、仮釈放される可能性がある。無期懲役と有期刑の間には大きな差があり、山上被告は情状酌量され有期刑が妥当と考えていただけに、残念な量刑となった。今回の裁判では、「政治と宗教」と「宗教2世」の問題は、ほとんど議論されなかったので、将来の再発防止のためにも、控訴して活発に議論してもらいたいものである。 27日には、第51回衆議院選挙が公示され、12日間に及ぶ厳冬期の選挙戦が始まった。自民党は今回、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と創価学会の2つの宗教団体の支援を受けられず、地力が試される選挙である。頼みは「高市人気」であるが、どのような結果が出るのか興味深い。もし政権交代が起きれば、村山富市首相在任中の阪神淡路大震災、菅直人首相在任中の東日本大震災と、不思議と政権交代時に起きている。「2度ある事は3度ある」老婆心ながら心配になる。
12月18日、安倍晋三元首相が2022年7月8日奈良市で銃撃殺害された事件で、殺人などで罪に問われた山上徹也被告の裁判員裁判が結審し、検察側は無期懲役を求刑した。しかい、弁護側は山上被告が旧統一教会に翻弄された生い立ちや悲惨な境遇を考慮すれば、「最も重くても懲役20年までにとどめるべきだ」と主張した。今回の裁判は、宗教団体の「宗教2世」による元首相の殺害という、戦後史に前例がない事件だけに、量刑が最大の争点になる。 今回の裁判で一つ疑問に思うのは、検察側が安倍元首相の教団の友好団体に寄せたビデオメッセージへの評価である。検察側は、このビデオメッセージは殺人を誘発するものとは認め難いと判断した点である。しかし、山上被告にすれば自分たちを苦しめてきた、統一教会の韓鶴子総裁への安倍元首相の「敬意を表します」の一言は、ショックだったろう。韓総裁は、一番の標的だっただけになおさらである。山上被告の心情を考えれば、ビデオメッセージが銃撃事件を誘発する一助になったと考えるのが自然である。 それにしても、安倍元首相銃撃の映像を見るたびに、残念に思うことがある。警備員全員が前方ばかり見ていて、後方を見ている警備員がいないことである。なぜ、このような警備態勢がとられたのか、その理由が知りたい。もし、後方を見ている警備員がいれば、事件は防げたはずである。世界の標準から見れば、このような警備体制はあり得ないし、二度とこんな事件を起こしてはならない。そして、旧統一教会の横暴を許してきた、政治やマスコミは大いに反省しなければならない。 安倍氏を突然亡くした妻昭恵さんの悲しみは計り知れない。陳述書で「罪をきちんと償うように求めます」と述べ、「極刑を求めます」と言わないところに山上被告への配慮が感じられる。これは、元首相の妻としての矜持なのだろう。来年、1月20日に言い渡される判決に注目である。