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多神教と一神教

  • 2023年5月31日
  • 読了時間: 2分

5月24日、日本ムスリム協会はイスラム教徒が宗教施設を壊し逮捕された事件を受け、「宗教的観点からみても誤った行為」と非難した。その事件とは、神戸市の神社で民族衣装を着たアフリカ・ガンビヤ国籍の男が「神様はアッラーしかいない」と叫び、さい銭箱など宗教施設を壊した出来事である。アフガニスタンのバーミヤン遺跡の大仏爆破映像が強烈だっただけに、このような事件には敏感にならざる負えない。先月には、石巻市で土葬可能な霊園設置の要望が出され、今月は神社施設の破壊と、イスラム教徒の増加によって将来起きるだろうと危惧された出来事が続いた。

 日本は、八百万の神々が宿る多神教で、世界一の火葬大国である。一方、イスラム教国は偶像崇拝を嫌う厳格な一神教で、土葬大国である。この相反する宗教を日本社会で共生させるために、日本ムスリム協会との連携がより一層必要になるだろう。日本ムスリム協会は1952年、「イスラム教徒が日本社会と協調しながら、教義を実践できるよう設立された」団体で、日本におけるイスラム教布教伝道の中心を担っている。イスラム教の聖典クルアーンには、「あなた方は、彼らがアッラーを差し置いて祈っているものを謗ってはならない」と書いてある。この言葉が、多くのイスラム教徒に共有されることを、切に願っている。

 日本とイスラム教の歴史は戦後始まったばかりで、鉄砲伝来以来500年の歴史を持つキリスト教と比較すれば、まだまだ日が浅い。キリスト教とは長い歴史の中で、紆余曲折を経て今日の安定した関係を築いている。イスラム教との関係は、これから様々な軋轢が起きるだろうが、お互い知恵を出し合い解決しなけれならない。これは、日本社会が避けて通れない道であり、日本人一人一人の覚悟が問われることになる。日本の50年後の人口は8700万人、その一割は外国人になると予想されている。現在の外国人は180万人なので、約5倍になる計算になる。必然的にイスラム人口は大幅に増加し、イスラム教の社会的影響が大きくなることは必至である。

 日本社会にとって、21世紀はイスラムとの共生の道を探る、厳しい世紀になるだろう。

 
 

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