
3月27日、待ちに待ったプロ野球が開幕した。楽天の戦いぶりは今一で、デーブ新監督も頭の痛いことだろう。野球用語に「敬遠」という言葉がある。この言葉の語源は『論語』の中にある。儒教の祖である孔子に、弟子が「鬼神に出会った時、どのように対処したらよいか」という問いの答えが、敬遠である。ようするに、恐い神様に出会った時は、敬って遠ざけなさいという答えである。それは、野球の敬遠の場面を想像すれば理解できる。ピンチの時、打たれそうな恐い打者に対しては、敬って一塁に歩いてもらう。それは、勝負に勝つための、一つの戦術である。
今、話題になっている、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対する、日本の対処にも一脈相通ずる所がある。3月12日のイギリスを皮切りに、17日のフランス、ドイツ、イタリアが揃って参加表明した。その後、続々と参加国が増え、40ケ国を超えた。確かに、この流れを見ると、日本にとってピンチのように思える。しかし、今までの中国のやり方、そして経済の現状を考えると、簡単には乗れない、後が恐い話である。AIIB設立の動機は、習近平国家主席の「中国の夢」を実現する戦略の一環なのだろう。それは、阿片戦争(1840~1842)以前の偉大だった中国の栄光を取り戻す、白昼夢である。
阿片戦争とは、イギリスに敗れた清国が、欧米列強に翻弄され、大国から転落するキッカケとなった戦争である。日本に歴史を学べというが、中国も歴史に学び、阿片戦争の轍を踏まないように、注意しなければならない。G7で、いの一番に参加表明したのが、イギリスということも、何か因縁めいている。中国が、世界の工場から世界の銀行になれるのか、疑問である。米ドルが、世界の基軸通貨になる歴史を見れば、自ら進んで基軸通貨になったわけではない。ある意味、渋々その役割を引き受けたというべきであろう。中国の経済基盤は脆弱であり、多くの国内問題を抱えている。中国元の国際化を急ぐあまり、国内が疎かになり、社会が混乱すれば、もとも子もない。夢はいつか醒める運命にある。
今日が、AIIB参加期限であるが、恐い中国の内情を知る日本は、中国の知恵を使い、暫く敬遠するのが賢明な選択である。日本の知恵は「触らぬ神に祟りなし」である。
2月19日は、旧暦のお正月、中国では「春節」という。このお正月休みを利用して、日本に大勢の中国人観光客がやって来た。その爆買いぶりが、連日テレビで放映されていたが、昭和40年代の物が面白いように売れた、日本の高度成長期を彷彿とさせる光景であった。このような状況に、日本政府はほくそ笑んでいるだろうが、中国政府は複雑な心境だろう。中国人観光客の爆買いによって、忘れ去られていた旧暦が、クローズアップされるとは、何とも興味深い。
そもそも、日本においても、昭和40年代の農村地帯では、旧暦が多く使われていた。お寺の行事も、農家の都合に合わせて、旧暦で行われていた。米作りには、新暦よりも旧暦の方が適している現実があった。今でも、一部の農家では、旧暦を用いて農作業を行っている。しかし、経済の中心が農業から工業に変わり、今では日本人の多くは、旧暦を知る機会がなかった。しかし、中国人観光客の爆買いによって、旧暦を知るよい機会となった。
旧暦(太陰太陽暦)は、明治5年(1872)明治改暦によって新暦(太陽暦)に、主役の座を明け渡した。なぜ改暦されたのかといえば、旧暦は1年が約11日短く、3年に1回、1年が13ヶ月となり、国の予算を作る上で複雑不便であるという理由、もう一つは国の役人に支払う給料が、3年ごとに1ヶ月分多く支払わなければならないという、経済的な理由である。現実問題として、毎年正月の日付が変わっていたのでは、ビジネスを行うには不都合であるが、中国人観光客の爆買い見れば、日本経済にとって「春節」は好都合である。
東京オリンピックに向けて、ますます「春節」が注目されるだろうが、経済効果ばかりではなく、政治の世界にも、よい影響が及ぶことを期待している。